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箱根HAKONE
モデルコース · 雨の日

【東京から約80分】雨の箱根、日帰りは『屋内の厚み』で天気に振り回されない

hakone, Japan
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  1. 雨が奪うもの、そして残すもの
  2. アクセスと、雨が選ばせるルート
  3. 土砂降りの日、地元はどこで食べるか
  4. 雨でこそ映える、あるいは強くなる体験
  5. 眺めを売る町の、雨の日にだけ開く裏口
東京から
約80分(ロマンスカー)
路線
小田急、湯本まで直通
フリーパス
¥7,100(2日間・新宿発)
ロマンスカー座席
片道 約¥1,150
雨でも強い
彫刻の森、ガラスの森
雨なら見送り
大涌谷ロープウェイ、海賊船デッキ

天気予報に旅を明け渡したくない日が、ある。そんな日の箱根は、よく効きます。新宿から片道約80分、ロマンスカーなら乗り換えなしで湯本まで運ばれ、屋根を打つ雨音と湯気の匂いのなか、一日が屋内でつながっていく。2024年に迎えた観光客は2,031万人、2,000万人を超えたのは6年ぶりでした。

その2,031万人の目当ては、大きく二つに割れます。ロープウェイ・芦ノ湖・富士という開放的な周遊と、温度管理された美術館と温泉という濃密な在庫。雨が前者をつぶしても、後者は東京近郊でいちばん奥行きのある日帰りメニューのまま残ります。だから雨は、箱根を中止にするのではなく配点を組み替えるだけ。どうせ見えなかった眺めを手放す代わりに、晴れの日には人混みに追い出される『もう半分』が手に入る——そんな取引です。

    雨が奪うもの、そして残すもの

    まずは、誰が来る町なのかから。2023年、箱根を訪れた人のおよそ79.8%が日帰りでした。総数1,951万人のうち日帰りが1,557万人、泊まっていくのは約20.2%にとどまります。この偏りが、雨の日にじわりと効いてくるんです。天気にいちばん敏感なのは、日帰り客だから。『富士山が出ているなら行こう』という東京発の気まぐれな客は、予報が崩れれば家を出ません。いっぽう、浸かって泊まる宿泊客は天気にほとんど無頓着。それでも来た、覚悟の決まった日帰り客だけが、いちばん混む名所の空いたバージョンを受け取ります。

    周遊路に目を移すと、絵はもっとくっきりします。雨の本当の被害者は、眺めだのみの区間だけ。強風で止まり、動いても雲に呑まれてしまう大涌谷越えの箱根ロープウェイ。水面に立つ箱根神社の朱の鳥居——日本有数の被写体が、霧雨だとまるで読み取れない芦ノ湖の屋根なし遊覧船。裏を返せば、それ以外はすべて生き残ります。登山鉄道沿いの美術館ベルト、温泉、湯本のそば屋。どれも、地平線を必要としません。

      アクセスと、雨が選ばせるルート

      新宿からは、小田急ロマンスカーが箱根湯本まで約80分で直通、全席指定です。この一席が働くのは、晴れよりむしろ雨の日。乗り換えいらずで、雨のホームを走らずに済みます。新宿発の2日間有効『箱根フリーパス』は¥7,100で、登山電車もバスもロープウェイも芦ノ湖の船もひとくくり。ロマンスカーの座席指定は、片道おおむね¥1,150〜1,200の上乗せです。それでも雨の行程なら、しっかり元が取れます。美術館のあいだを運んでくれる登山鉄道とバスが、はなからパスに入っているからです。

      雨が書き換えるのは順番であって、パスそのものではありません。眺めを追いかけて周遊を一周する代わりに、一日の軸を湯本〜強羅の登山鉄道に据えます。三つのスイッチバックで標高約750mまで這い上がる、日本最古の山岳鉄道。この沿線の美術館を、ひと駅ずつ拾っていくんです。大涌谷と芦ノ湖は、雲が切れたら挑む『追加メニュー』と割り切る。一日の背骨は、あくまで屋根のある区間で組みます。

        土砂降りの日、地元はどこで食べるか

        雨の日は、長くゆったりした昼食が行程を食う邪魔者ではなく、行程を支える軸に変わります。そして到着地であり、雨が最初に出迎える箱根湯本こそ、その軸を効かせるのにうってつけ。町の看板はそばです。湯本駅からすぐの『初花そば本店』は1934年から続き、せいろそばは水ではなく自然薯と卵でつなぐ土地のスタイル。この行列は、雨でも消えない数少ないもののひとつなんです。数分歩けば、『湯葉丼 直吉』が静かな対抗馬を差し出します。箱根の湧き水で仕上げ、ご飯に湯葉をのせた一杯。湯気の立つ椀は、土砂降りのためにあつらえたように温かくてゆっくりしています。

        利便性より味で選ぶなら、そば純粋主義者の一軒は『竹やぶ箱根』。香り高い自家製麺と洗練されたつけ汁で知られる、ミシュランの星付き店です。そして地域でいちばん天候に強いおやつには、屋根すらいりません。大涌谷の硫黄泉で、殻が黒くなるまで茹で上げる黒たまご。黒たまご館では一袋4個ほどが¥500で並び、ひとつ食べれば寿命が七年延びる、と土地では言い伝えられてきました。晴れの日は眺めのついでの土産ですが、雨の日、雲の切れ間を突いて谷へ降りるなら、それこそが谷を目指す理由そのものになります。

          屋根の下だけで完結させたい日に

          登山鉄道沿いに辿る、雨の日ルートを一駅ずつ

          湯本のそば、雨の合間に美術館ベルト、締めは長湯。ロープウェイは思いきって飛ばして。

          雨の日ルートを開く

          雨でこそ映える、あるいは強くなる体験

          箱根の美術館群は、雨がむしろ値打ちを引き上げてくれる珍しい顔ぶれです。1969年開館、70,000平方メートルに広がる日本初の野外美術館が『箱根 彫刻の森美術館』。ロダンやヘンリー・ムーア、ミロが芝生に点在する光景で知られますが、本当の雨の切り札は屋内にあります。300点を超えるコレクションを収めたピカソ館と、雨がもたらすあのフラットな灰色の光でこそ輝くステンドグラスの塔。大人の入館料は¥2,000、登山鉄道の彫刻の森駅からすぐです。同じベルトを下れば、ヴェネチアン・グラスに特化した日本初の美術館『箱根ガラスの森美術館(ガラスの森)』がようやく本領を発揮します。屋外のクリスタルの造作は光を捕らえるように作られ、屋根付きの回廊は雨にもかかわらずではなく、雨だからこそきらめくんです。入館料は約¥1,800で、こちらもフリーパスの対象。

          そしてもう半分、雨が本当に引き立ててくれる箱根があります。屋根を叩く雨音と、湯面から立ちのぼる湯気。長湯の温泉にとって、これはほとんど理想の空模様です。屋内の湯船と屋根付きの露天を併せ持つ宿を選べば、冷えることなく風情だけをすくい取れます。ギャラリーより歴史を、という日には、人が避ける雨の定番を旧東海道が用意しています。保存された杉並木をたどり、芦ノ湖畔の復元された箱根関所へ。ひと息つくなら『甘酒茶屋』、300年以上この街道に立つ茅葺きの茶屋です。十三代続く山本家が、何世紀も前に雨に降られた旅人にそうしたように、伝統の甘酒と力餅を差し出してくれます。

            眺めを売る町の、雨の日にだけ開く裏口

            ここで、ひとつ逆張りの読みを置いておきます。箱根が売り物にしてきたのは、ロープウェイから望む富士や、湖に立つ鳥居といった開放的な周遊です。でも、その看板商品こそ、いちばん脆い部分なんです。雨はもちろん、雨につきものの風と雲でもあっさり倒れてしまう。本当に強い核は、宣伝が控えめにしか語らない側に隠れています。屋内に収まり、手にしたフリーパスで動き、晴れ目当ての日帰り客が家にとどまった瞬間にふっと空く、あの美術館の密度と温泉の奥行き。雨はこの核を、少しも損ないません。注意を奪い合う相手を、静かに退けてくれるだけです。

            まだ確信とまではいきませんが、そろばんは合います。訪れる人のおよそ五人に四人が、眺めを追う天気まかせの日帰り客。だとすれば、芳しくない予報は、いちばん安上がりな混雑よけになります。しかも箱根は、その眺めをまるで必要としない稀有な『第二幕』を持っている町。朝いちの直通ロマンスカーに乗り、一日を登山鉄道とその美術館に預け、長い自然薯そばの昼食に最悪の時間帯を吸わせ、屋根を打つ雨の下、温泉で締める。歩き終えたころには、晴れた週末がこっそり隠していた箱根の、もう一つの顔を見届けているはずです。

              Good to know

              雨の日の箱根は行く価値がありますか? +

              あります。東京近郊でいちばん雨に強い日帰り先のひとつなんです。眺め頼みの周遊、たとえばロープウェイや屋根なしの遊覧船、湖畔の鳥居の撮影は、土砂降りだと台無し。けれど登山鉄道沿いの美術館群と温泉は、むしろ雨の日にこそ本領を発揮します。晴れ目当ての日帰り客が減るぶん、人混みもすっと薄まりますよ。どうせ見えなかった眺めを手放して、屋内側の半分を受け取る。そう思えば悪くない一日です。

              雨の日、箱根では何ができますか? +

              登山鉄道沿いの、屋根のある場所に一日を据えるのがおすすめです。箱根 彫刻の森美術館の屋内ピカソ館とステンドグラスの塔、ヴェネチアン・グラスの箱根ガラスの森美術館、そして長湯の温泉。できれば屋内浴と屋根付き露天を併せ持つ湯を選んでみては。箱根湯本でゆっくりそばか湯葉の昼食を挟み、歴史に心が動く日なら、旧東海道の杉並木から甘酒茶屋まで足をのばしてみましょう。

              雨の日、箱根で外していい見どころは? +

              強風で運休し、雲に呑まれてしまう大涌谷越えの箱根ロープウェイ。それに、眺めが目的の芦ノ湖の屋根なし遊覧船です。水中に立つ箱根神社の朱の鳥居も、霧雨ではまるで読み取れません。パスの経路上、移動の足として乗るぶんには問題なし。ただ、一日の背骨をそこに預けないのがコツです。湖上の鳥居の一枚は、もっと晴れた旅のためにとっておきましょう。

              雨の日でも箱根フリーパスは元が取れますか? +

              しっかり取れます。新宿発の2日間フリーパスは¥7,100で、美術館のあいだを運ぶ登山鉄道とバス、つまり雨の日に本当に使う区間をまるごとカバー。箱根ガラスの森美術館の入館料まで含まれます。ロマンスカーの座席指定は、片道おおむね¥1,150〜1,200の上乗せ。雨のホームで乗り換えたくない日に、扉から扉までの到着は、その差額に十分見合いますよ。