
日光を訪れる人の多くは、実のところ駅周辺からほとんど動きません。コロナ前、この町には年間10万人前後の外国人が訪れていましたが、よく言われる通り、その大半は東京からの日帰りで、東武日光駅と東照宮のあたりに集まり、奥日光や中禅寺湖、湿原まで足を延ばす人はごくわずかです。子連れの場合、これは「直すべき失敗」ではなく「計画の前提にすべき制約」です。日光の子連れ旅を形づくるべき数字は、まず移動時間。東武特急スペーシアきぬがわ・けごんは浅草から東武日光まで約1時間50分の直通なので、往復でおよそ3時間半、誰かが何かをする前にすでに一日から差し引かれている計算になります。
そこで基本ルールはこうです。目玉を一つ選び、そこに短めの神社見学を組み合わせ、子どもの体力を守る。彫刻の社寺、江戸のテーマパーク、山の滝を一つの午後に詰め込む家族を、日光は容赦なく打ちのめします。逆に、選び切った家族には応えてくれる町です。
人の流れを実際に見ると、絵がガラリと変わります。東照宮は2020年、トリップアドバイザーの外国人に人気の観光スポットで7位。到着した人のほぼ全員をいったん吸い込み、その多くはそのまま東京方面へ折り返すため、山を上った先の外縁部は比較的すいたままになります。この一極集中こそがてこです。神社エリアはベビーカーを押しながら並び、じりじり進む場所。山は、疲れた子どもが息をつける空間のある場所。だから午後の後半の使い方は、子どもの年齢と移動への耐性で二つにきれいに分かれます。そして正午に東照宮の前で疲れて立ち尽くす前に、あらかじめ選んでおくこと。それが勝負のほとんどを決めます。
浅草からスペーシアけごんが東武日光まで約1時間50分の直通、運賃は特急料金と指定席を含めて¥2,700ほど。これは必ず予約してください。帰りの席が確実に取れることの価値は、大人だけの旅より子連れの方がずっと大きいからです。この直通は平日で約6本、土休日で約7本(同じルートを新型のスペーシアXも走ります)。少し時刻を確認しておくだけで、一日の終わりのホームでの長い待ちを避けられます。東武は、山で使う路線バスを組み込んだ日光エリアの割引パスも売っていて、バスに2区間以上乗る家族なら、たいていパスの元は取れます。
朝は東照宮から。ただし歴史の講義ではなく「探しものゲーム」として回します。彫刻がこちらの仕事をしてくれます。見ざる・言わざる・聞かざるの三猿、そして門の上でまどろむ眠り猫は、まさに6歳児が廊下を追いかけたくなる「どこだ?」パズルそのものです。時間は1時間ちょっとを見込み、階段と砂利はベビーカーより抱っこひも向きだと割り切って、そのうえで午後の目玉を一つに決めましょう。
小さい子には、町の近くにある江戸時代のテーマパークという「囲われた」選択肢。衣装、忍者や花魁の街頭ショー、歩いて回れる江戸の町並みがそろっています。設計上、これで午後まるごと。1日通し券は大人が約¥5,800、小学生が約¥3,000、6歳未満は無料で、開園はおおむね9:00〜17:00(真冬は短縮)。子どもサイズの着物や忍者衣装のレンタルは、多くの家族の一番の思い出になる部分。そして肝心なのは、入ってしまえば一つのゲート、一か所で完結し、あとの移動が要らないことです。
乗り物に耐えられる年上の子には、山の目玉のほうが手間に見合う価値があります。そこへ向かう道がいろは坂。48のカーブそれぞれに古典「いろは歌」の文字が当てられていて、登り坂そのものが車窓から数える楽しみになります。上に着けば、明智平ロープウェイは約3分の空中散歩(15分間隔ほど、往復約¥750、通常9:00〜16:30、木曜運休)で、標高1,373mの展望台へ。華厳の滝、中禅寺湖、男体山が一枚の額に収まる、ハイキング不要のわかりやすく大きなご褒美です。そこから、滝から歩いてすぐの、日本一標高の高い天然湖・中禅寺湖の遊覧船に乗れば、歩き疲れた足のための、腰を下ろせる2つ目の見せ場になります。
日光の名物といえば湯波(ゆば)。豆乳を煮て張った膜をすくったもので、くせがなく柔らかく、取り分けもしやすいので、好き嫌いの多い子がいても一食は本物を試す価値があります。この町の湯波を有名にしたのは、駅近くの「元祖 日光ゆば料理 恵比寿家」のような店で、湯波の会席が味わえます。子連れでもう少し入りやすいのは「普段懐石 和み茶屋」。月替わりの本格湯波御膳を、古民家のカジュアルな雰囲気の中、手頃な値段でいただけます。湯波がどうしても厳しければ、地元の家族が本当に使う「餃子のうめちゃん」が頼れる逃げ場。巨大な「うめちゃん」餃子、日光ゆば餃子、ラーメンと、子どもに効く鉄板メニューがそろっています。湖の上のほうなら「つるや湯波」が、揚げ湯波と湯波スープに加え、食べ応えのある湯波カレーを中禅寺湖の眺めとともに。渓流沿いの紅葉散策では、竜頭ノ滝を望む「龍頭之茶屋」が、崩れかけた機嫌を立て直す、温かく短い立ち寄りにぴったりです。
データを見ていると、少し見方が変わります。数字が繰り返し私を向かわせるのはこのパターンです。ほぼ全員が日光を「社寺を見て帰る」日帰りとして扱うせいで、外縁部 ― 湖、滝、湿原 ― は、その良さに比べて構造的に訪れられなさすぎている。そしてその落差こそが、家族にとってのチャンスです。標高およそ1,400mにあるラムサール条約登録の湿原・戦場ヶ原が一番わかりやすい例。400ヘクタール、350種を超える植物の間を縫う、約6kmの平らな木道の周回路で、草は9月下旬から金色に色づき、カラマツやカエデは10月に見頃を迎えます。実質的に「空の上のベビーカー向きの長い散歩道」なのに、大半の日帰り客はたどり着けません。社寺の混雑で時間を使い切ってしまうからです。とても小さい子との初回訪問で毎回できるわけではありません。でも、この場所の捉え方を変えてくれます。看板の名所には人がいて、静かで広々とした、本当に子ども向きの日光は、その人混みが素通りする部分にある。子連れなら、この静かな半分こそが、しばしば「良い半分」なのです。
はい、焦点を絞ればおすすめです。浅草から直通のスペーシアで片道約1時間50分、往復でおよそ3時間半は移動になります。目玉を一つ(江戸時代のテーマパークか、ケーブルカーで登る山か)に決め、短めの東照宮見学と組み合わせて、両方をやろうとしないこと。疲れた子どもの帰りの席が確実になるよう、復路は指定席を予約しておきましょう。
年齢によって、どちらもうまくいきます。午前は東照宮を彫刻の「探しものゲーム」(三猿、眠り猫)として1時間ほどで。そのうえで選択を。小さい子は町近くの囲われたテーマパークのほうが向いています。48カーブのいろは坂に耐えられる年上の子なら、約3分の明智平ロープウェイで華厳の滝と中禅寺湖を望む展望台へ上がり、さらに湖の遊覧船を足すほうが得るものが大きいでしょう。
一部は難しいです。東照宮のエリアは階段や砂利があるので、小さい子には抱っこひものほうが楽。意外なのは山の上で、戦場ヶ原の湿原の木道は約6kmの平らな周回路で、足元は社寺よりずっと優しいのです ― ただし長めの外出になるので、多くの家族は2回目の訪問や、もう少し大きくなってからに取っておきます。
湯波(柔らかくくせのない大豆の膜)が名物で、取り分けもしやすい一品。和み茶屋は肩の力の抜けた入り口として、湖の上の「つるや湯波」なら湯波カレーも。どうしても厳しければ、家族経営の「餃子のうめちゃん」が、特大の餃子とラーメンで頼れる定番。子ども向けの安心な選択肢です。