
飛行機の待ち時間って、たいてい持て余してしまいますよね。でも成田なら、空港から徒歩15分ほど、電車でわずか2〜3駅の寄り道で、線香の煙と太鼓が響く古い門前町にちゃんと降り立てます。歩き出してみると、世界有数の混雑空港のすぐ隣とは思えない静けさ。年間1,000万人以上が訪れ、初詣は明治神宮に次いで全国2位という成田山新勝寺が、平日の朝はふっと息をつけるほど空いているんです。
このプランを決めるのは、じつはふたつの事実です。ひとつは、日帰りにしては地理がやさしいこと。JR成田駅と京成成田駅は徒歩5分ほどしか離れておらず、古い参詣道の表参道をそこから下り坂で15分ほど歩けば、もう山門の前。境内は無料なので、券売所の行列で足止めされることもありません。ふだんの日に足りなくなるのは、静かな小道くらいのものですよ。
データを見ると、景色が少し変わります。混雑は季節と日付に、びっくりするほど偏っているんです。年間1,000万人。そのうち300万人超が、初詣のために正月の三が日へ集中します。残りを引き受けるのが、ふたつの祭り。園内に約360本の梅がほころぶ梅まつりは、2月中旬から3月上旬にかけて。樹齢を重ねたモミジやイチョウ約250本が燃えるように染まる紅葉まつりは、おおむね11月15〜30日です。つまり300万人規模の波を捌けるよう作られた寺が、その時期以外は、用意された器をうんと持て余しながら回っているわけです。あとは早めに動くだけ。人出は一日のなかでも均一ではなく、昼どきの表参道にじわりと溜まっていきます。うなぎの行列が伸び、参道全体の流れがもったりと鈍る時間帯ですね。
荷物は駅か空港のコインロッカーに預けて、人の少ないうちに参道へ踏み出しましょう。石畳の両脇に和菓子屋や茶店が軒を連ねる、江戸時代からの参詣街道です。和菓子の甘い香りがふわりと漂うなかを、帰りに寄るうなぎ屋へ目星をつけながら下っていきます。途中、なごみの米屋(米屋總本店)の羊羹やピーナッツ最中もチェックしておくと、戻り道の手土産選びが楽になりますよ。
創建は西暦940年。山門の構えから思うよりずっと広く、大本堂を中心に三重塔や塔群、人けのない諸堂が点在します。到着は護摩祈祷の時間に合わせるのがおすすめ。不動明王の前で約1,000年続く真言密教の儀式で、腹に響く太鼓の音に合わせ、僧が護摩木を炎へくべていきます。堂内に立ちのぼる煙と熱気に包まれる、この土地でしか味わえない時間。平日はおよそ1日5回、見学は無料ですよ。
大本堂の真後ろに、約165,000平方メートルの日本庭園が広がります。池のほとりを歩けば、収蔵6,000点を超える書道美術館があり、参道のざわめきがすっと遠のいていく。冬の終わりには梅、11月にはモミジが色づき、龍智の池のほとりでは琴と尺八の音色が風に乗って流れてきます。ふっと肩の力が抜ける、この日いちばん静かな一角ですよ。
帰路につく前に、炭火で焼いたうなぎで歩いたご褒美を。香ばしいタレの煙が店先まで漂う川豊本店(1910年創業、観光案内所の向かい)が有名どころで、軒先でうなぎを捌く実演も名物です。ふっくら焼けた一枚を頬張れば、朝からの疲れがほどけていくはず。ただし昼の行列は、この日いちばん避けたい足止め。数軒先の駿河屋や菊屋は、もう少し落ち着いて味わえる老舗の選択肢ですよ。
都心からのまっとうなルートは、ふたつ。京成上野発の京成アクセス特急なら、京成成田まで約60〜75分、運賃はおよそ¥1,240です。東京駅発のJR総武快速線は、JR成田まで約1時間20分、運賃はおよそ¥1,340。ひとつだけ、落とし穴を名指ししておきますね。スカイライナーは空港のための列車であって、町のためのものではありません。割増運賃を払って成田山へ向かうのは、お金の使いどころがもったいないですよ。
飛行機の合間なら、話はもっと単純です。成田の町は空港から東京方面へ、たった2〜3駅戻るだけ。東京への往復ではなく、短くて安いひと駅ぶんの延長のようなものです。そして寺は駅から徒歩15分。正直、しばられるのは観光時間より、帰りのバッファのほうなんです。乗り継ぎが5時間あればゆったり滞在、4時間を切るなら寺と早めのうなぎに絞って、公園はまた次に。どちらにしても、出発の2時間前には保安検査を抜けて戻ること。この一点の規律こそが、いい成田の日帰りと乗り遅れの分かれ道ですよ。
ぎゅうぎゅうの乗り継ぎではなく、本当の半日が手元にあるなら。ここで待っている楽しみは、どれも「ゆっくりする」ことをそっと求めてきます。寺では写経、つまり筆でお経を書き写す瞑想のひとときが過ごせて、太鼓と煙の護摩堂とはちょうど対をなす静けさに包まれます。江戸の参道を当時の装いで歩きたいなら、表参道のすぐ脇の町かどふれあい館が、水曜から金曜に約¥800で着物を貸してくれますよ。頼りにする前に、曜日と時間だけ確かめておきましょう。
歩いていると気づくのは、ここでは季節の暦がほとんどの仕事をしているということ。冬の終わりの梅まつりや、11月の紅葉に当たれば、同じ公園がまるで別の顔を見せてくれます。紅葉の時期には、週末に石照庵の茶室で無料のお茶会も開かれるんですよ。その季節を外せば、ただ静かな庭。けれど慌ただしい旅の一日には、その静けさこそが狙いどきなんです。
ここからは、少し逆張りの読みです。成田が「ついで」に扱われがちな理由——それは空港の町という顔つきそのもの。じつはこれが、この町を空いたままにしているのだと思います。1,000万人が訪れますが、その多くは正月と祭りの週末に集まる国内の参拝者。15分先を素通りしていく海外の旅行者ではありません。需要がぎゅっと偏っているからこそ、これほどの格の寺なのに、平日の朝はふしぎなほど空いているんです。
編集部の提案はこうです。成田を「埋めるべき遅延」として扱うのをやめて、短くて意図のある朝として走らせてみる。早い電車に乗り、うなぎの行列ができる前に表参道を山門まで下り、護摩祈祷を見て、11時半にうな重。公園は、静かな庭が混んだ参道に勝つ昼どきのために取っておきます。初詣そのものが目的でないかぎり、正月の三が日だけは外すこと。300万人が町にあふれるあの数日は、まったく別の旅ですから。この回し方なら、全国2位の混雑で知られる寺を、息のつける余白ごと、しかもゲートに間に合うバッファを残して味わいきれますよ。
寺、表参道、成田山公園、そしてうなぎの昼食までゆったり回って、おおむね3〜5時間ほど。寺はJRまたは京成成田駅から徒歩約15分で、見た目よりずっと広いので、ここだけで70分は見ておきたいところです。半日あれば、急がず気持ちよく巡れますよ。
行けますよ。日本の空港から足をのばせる寄り道のなかでも、屈指の手軽さです。町は東京方面へたった2〜3駅戻るだけ、寺は駅から徒歩15分。荷物を預け、寺と早めのうなぎを済ませて、出発の少なくとも2時間前には保安検査を抜けて戻りましょう。乗り継ぎ5時間ならゆったり、4時間を切るなら公園は省くのが正解です。
祭りの期間を外した、平日の午前中です。いちばん混むのは、1月三が日の初詣。その数、なんと300万人超です。次いで2月中旬から3月上旬の梅まつり。そして11月中旬から下旬の紅葉まつりと続きます。ふだんの日で唯一の渋滞ポイントは昼の表参道、うなぎの行列くらい。早めに参道を下って、正午前に食べてしまうのがおすすめですよ。
境内も護摩祈祷も無料なので、実際にかかるのは交通費と昼食くらい。東京からの往復電車は、おおむね¥2,500〜2,700です(京成は片道約¥1,240、JR総武快速は約¥1,340)。ここに表参道のうな重、お土産の羊羹、必要なら¥800の着物レンタルを足しても、気持ちのいい半日はそれほど高くつきませんよ。