
朝いちばんの湖畔で、正面の富士山にただ見とれる。そんな一日は、新宿から片道約1時間55分・¥4,130の直通特急で手に入ります。駅を出れば、東京より少しひんやりした湖の風に包まれるはず。ただ、この景色を目指す人はいま急増中で、富士河口湖町の外国人宿泊者数は2024年に約75万6,000人まで伸びているんです。
なにしろ前年比31%増で、コロナ前2019年のピークをすでに超えた人気ぶり。それに対して、東京からの直通列車は1日わずか4往復、しかも全席指定です。行きたい人の数が、運べる席の数を追い越しているわけですね。とはいえ、選択肢の整理はかんたん。まともなルートはどれも新宿発(東京駅ではありません)で、直通特急・節約の乗り換え・高速バスの3つだけです。あとは予算と、初めての人がたいてい見落とす「いつ着くか」で選べば、もう迷いませんよ。
数字を眺めていると、本当の問いは「どうやって行くか」ではなく「いつ着くか」なのだとわかってきます。富士山がすっきり全景を見せてくれる日は、実は少数派。地元では「3日に1日程度」とよく言われます。勝率が上がるのは早朝、おおむね6時から9時。靄(もや)が晴れて、午後の雲もまだ湧いていない時間帯です。夏の週末に11時半到着では、お目当てのあの一枚はほとんど諦めたようなもの。だからと言って旅をやめる話ではなく、乗れる限りいちばん早い便に乗る、それだけの話ですよ。
もうひとつ、覚えておきたい数字が「4」。記録的なにぎわいの町に対して、直通列車は1日4往復しかありません。桜や紅葉のシーズンには、人気の便が数日前に売り切れてしまうんです。混み合うのは帰り道も同じ。週末は帰りのバスも最終列車も埋まり、しかも多くの人が思うより早い時間に出てしまいます。予約は行きだけでなく、必ず往復で。
富士山の眺めが最優先なら、答えはほぼ決まっています。数日前に予約した始発クラスの「富士回遊」か、前夜のバスで入って湖畔に一泊。予算重視の日は、行きを平日の大月乗り換えにして、帰りにバスを残す組み合わせがよく効きます。ただ、日曜夕方のバスで中央道の渋滞に賭けるのはやめておきましょう。大きな荷物や子ども連れなら、確約された直通特急の座席に差額を払う価値は十分ありますよ。ちなみに、富士山の麓に駅はありません。拠点はあくまで河口湖駅で、そこから周遊バス(オムニバス)が各方面へ延びていきます。ハイシーズンの昼どきは立ち客でぎゅうぎゅうになるので、これもまた、早着をおすすめする理由のひとつなんです。
到着時刻は、その日のごはんまで決めてしまいます。河口湖の飲食店は、いい意味で「田舎の時間」で動いているからです。名物はほうとう。かぼちゃと一緒に味噌でくつくつ煮込んだ平打ち麺が、鉄鍋のまま湯気を立てて運ばれてきます。ただし有名店は、ピーク時に30〜60分待ちの行列。駅から徒歩8分、大きな水車が目印の「小作」がまず外さない定番です。Googleレビューは約6,800件で4.2★。その角を曲がった先の鉄板焼き「てつやき」は、テーブル4卓だけの小さな店です。こちらは約1,400件で4.7★という、町の隠れた実力派なんですよ。ただし日曜定休。町でいちばん安くちゃんと食べたい日は「たけ川うどん」へ。コシの強い吉田うどんが¥600〜900程度で、昼のみ営業です。10時に着いて、行列ができる前の11時半に食べてしまえば、午後がぐっと軽くなります。多くの店は15時〜17時に中休みを取り、20〜21時には閉まってしまうもの。正直なところ、日没後に開いている店探しは骨が折れるので、夕食は早めの時間が狙い目ですよ。
7時台に東京を出る見返りは、眺めだけではありません。一日のうちで「いちばんいい時間帯」を、まるごと自分のものにできることです。〜河口湖〜富士山パノラマロープウェイは往復¥1,000、8:30から動き出します。わずか3分の空中散歩で、富士山と正対できるんです。船津浜桟橋から出る20分の遊覧船「アンソレイユ号」(¥1,000)なら、湖のまんなかで水音に包まれながら、稜線越しの富士山を見上げる格好。どちらも、雲が湧く前の朝が圧倒的です。北岸の大石公園は無料で、花と湖と山という定番の構図を朝いちばんの光で味わえます。同じ場所でも、8:30と11:30ではほとんど別物なんです。静かな湖畔か、バス待ちの行列か。
ひとつだけ、正直な注意を。駅の向かいのローソン(あの有名な写真スポット)は、オーバーツーリズムの象徴として全国に知られてしまい、町が目隠しの幕を張っては外し、を繰り返す事態になっています。でも大丈夫。同じ山のもっといい構図は、少し足を延ばせばいくらでも見つかります。あの人だかりに並ばなくても、失うものは何もありませんよ。
最後に、少しへそ曲がりな見方をひとつ。誰もが東京から河口湖への旅を「ルート比較」で語ります。列車かバスか、¥4,130か¥2,200か。けれど、町の統計で伸びているのは宿泊のほうなんです。みんな、うすうす気づき始めているのだと思います。片道2時間の移動は些細なことで、この旅の主役は朝6時から7時の時間帯なのだ、と。鏡のように静まった湖面、朝いちばんの光を受けてほのかに染まる冠雪、人の気配のない通り。そう考えると、バスで浮く¥2,000より、夜明けの北岸に立っている時間のほうがずっと重いはず。日帰りしかできないなら、平日の早朝に、往復とも予約して。一泊できるなら、行きのルートなんて、ほとんどどうでもよくなりますよ。
新宿発の直通特急「富士回遊」で約1時間55分(片道¥4,130)。大月乗り換えなら約2.5時間、高速バスは1時間45分〜2時間ほどです。ただし週末は中央道が渋滞しがちで、バスが3時間近くかかる日もあります。時間を読みたい日は特急が安心ですよ。
必要です。全席指定で、定期運行は1日4往復(+季節の臨時列車)だけなんです。春や秋のシーズンは人気の便が数日前に売り切れてしまうので、日程が決まったら、えきねっとかJRの指定席券売機ですぐ予約を。その際、帰りのバスや列車もいっしょに押さえておきましょう。
バスタ新宿発の高速バスで、片道¥2,000〜2,200程度から。河口湖駅まで直行してくれます。大月乗り換えの在来線ルートもほぼ同じ価格帯です。ただし、日曜夕方の帰りをバスだけに頼るのは避けたほうが無難ですよ。
保証はできません。全景が見える日はむしろ少数派で、地元では「3日に1日程度」とよく言われます。暖かい季節の午後はほぼ雲の中。勝率が高いのは早朝、6時〜9時ごろです。前夜に天気予報を確かめて、山頂が雲に隠れても楽しめる一日を組んでおくと安心ですよ。