
湯けむりに包まれて、平日の疲れをまるごとほどきたい——そんな週末の答えが、東京から約3時間・片道¥6,300〜6,500で行ける草津温泉です。不思議なのは、この日本一有名な温泉地に、今も鉄道の駅がないこと。2024年度の来訪者は401万9千人(前年比8.6%増)とついに400万人の大台に乗ったのに、その全員が山あいの最後の区間をバスや車で上がってきたんです。だから最速ルートは存在せず、3ルートどれも約3時間——決め手は本数と料金、そして意外なほど大事な「到着時刻」ですよ。
地図とにらめっこするより、時刻表を開くほうが早いんです。王道は上野発のJR特急「草津・四万」。所要約2時間20分・約¥5,770で山あいの長野原草津口に着いたら、JRバス関東に乗り換えて25分(IC ¥710)、湯の町の玄関口・草津温泉バスターミナルへ滑り込みます。合わせて約3時間、¥6,300〜6,500といったところ。気をつけたいのは本数で、特急は1日わずか2〜3本ですから、1本逃すと予定は分単位ではなく時間単位で崩れてしまいます。
乗り換えが面倒な日は、バスタ新宿発のJRバス「上州ゆめぐり号」が味方です。所要約4時間・料金は日によって約¥3,500〜4,500と、乗り換えなしでは最安の選択肢。重い荷物ごと座席に沈み込んでしまえば、あとは町の中心部まで運んでもらうだけです。車窓がビルから山肌に変わっていく道中は、昼寝にちょうどいい長さですよ。そのぶん特急より1時間よけいにかかり、週末は高速道路の渋滞もあり得るので、時間に余裕のある日に選ぶのが正解です。
第3の選択肢は、北陸新幹線で軽井沢へ抜けて、草軽交通バスに揺られる約80分のルート。組み合わせ次第ではドアtoドアで最速になることもあるんです。ただしバスの本数が少なく、帰りの最終便が驚くほど早い日もあるので、当日の時刻表チェックだけは欠かさずに。軽井沢がもともと旅程に入っているなら検討する価値あり、というくらいの立ち位置がちょうどいいと思います。ひとつ注意したいのは、新幹線をカバーするJRのパスでも、この私営バスは対象外だということです。
正直に言うと、このルート選びでいちばん見落とされている数字は料金ではなく、バスがターミナルに着く時刻だと思います。草津の個人経営の飲食店は昼営業が中心で、旅館の宿泊客は夕食を宿で食べるため、15時から18時の間に店じまいするところが多いんです。のんびりバスで17時半に着いた頃には、町の名店はもう椅子を片付け始めています。裏を返せば、ランチに間に合う便を選ぶだけで、旅の満足度はぐっと上がりますよ。
ターミナルから歩いて数分の範囲に、その答えがそろっています。湯畑へ向かう途中、揚げたての香ばしさに誘われて暖簾をくぐるなら、とんかつの「とん香」へ。ごはんとキャベツがおかわり自由のジャンボロースカツ定食が名物で、Googleレビュー576件・4.3★という評価にも納得の一皿です。西の河原通りまで足を延ばすなら、群馬県産小麦100%の平打ちひもかわ風うどんが看板の「松本」(4.2★・560件)はいかがでしょう。行列に気後れするかもしれませんが、回転は速めですよ。そして湯畑近くで呼び込みが差し出す無料の温泉まんじゅうは、そのまま店内へ案内される流れなので、スルーが正解。買うなら「松むら饅頭」の店頭がおすすめです。392件のレビューで4.4★は町でいちばんの評価で、皮が薄く甘さ控えめ、日持ちはわずか4日ほど。それだけ作りたてを売っている、ということなんです。
せっかくなので、この3時間の先に待っている景色も思い浮かべておきましょう。町のシンボル・湯畑では、毎分約4,000リットルの湯が木製の湯樋を流れ下っていて、しかもそれが町の中心広場のど真ん中にあります。源泉の自然湧出量は毎分32,300リットル超とされ、堂々の日本一。寒い朝に柵の前に立つと、硫黄の香りをまとった湯けむりが石畳のテラスを這うように流れて、体ごと包まれてしまいますよ。日が落ちれば一帯はライトアップされて、人混みはすっと消えていきます。
車派や周遊派には、うれしい補足をひとつ。草津白根山を越える国道292号は、噴火警戒レベルが1に引き下げられたのを受けて、2026年5月に通り抜け通行が再開されました。あのターコイズブルーの湖・湯釜を車窓から望むドライブが、帰ってきたんです。ただし火口縁付近へ歩いて近づくことは引き続き規制中で、道路も例年11月中旬から4月下旬までは冬季閉鎖。出発前に最新の規制状況を確かめてから、絶景ドライブを旅程に足してみてください。
冒頭の401万9千人という記録的な数字を、ここで逆から読んでみます。この人出の大半が湯畑周辺に集中するのは、だいたい10時から15時のあいだ。特急の時刻表で計算すると、東京からの日帰りで町にいられるのは4〜5時間で、そのすべてが一番混む時間帯にすっぽり重なってしまうんです。しかも帰る頃には、夕食の選択肢はもう店じまいの支度を始めています。
ところが1泊すると、この損得はきれいに引っくり返ります。日帰り客が消えた朝8時前や夜21時以降の湯畑を、自分の足音だけを聞きながら歩き、チェックリストをこなすペースではなく草津のペースで湯めぐりができるんです。標高1,200mの10月は、東京がまだ暖かい頃でも夜は氷点近くまで冷え込むことがあり、湯けむりは一年でいちばん濃く立ちのぼります。交通費は日帰りでも1泊でも同じ。「草津は過大評価」と言う人と日帰りで行った人は、実はかなり重なっているのではないかと、ひそかに疑っています。暖かい上着を1枚詰めて、朝イチの特急を予約してみては。この町の静かな時間は、泊まった人のものですよ。
実は「これが最速」という答えがないんです。上野発の特急「草津・四万」+接続のJRバスで約3時間、新幹線で軽井沢へ出るルートもほぼ同じレンジに収まります。特急ルートは乗り継ぎがダイヤで連携していてスムーズですよ。軽井沢からのバスは本数が少ないので、あてにする前に帰りの時刻表を必ず確認してみてください。
残念ながらありません。草津に駅はなく、最寄りは長野原草津口駅です。上野から特急「草津・四万」で約2時間20分、そこからJRバスで25分(IC ¥710)で町に到着。乗り換えなしで行ける唯一の手段は、新宿発の直行高速バスです。
JR EAST PASS(長野・新潟エリア)なら、特急も長野原草津口からのJRバスも両方カバーされます。気をつけたいのは軽井沢〜草津間の草軽交通バスで、こちらは私営のため、新幹線区間がパス対象でもバスはどのJRパスでも対象外なんです。
可能ですが、片道約3時間かけて滞在は4〜5時間だけ。しかもその時間帯は、2024年度に過去最高の400万人を記録した人出のピークとすっぽり重なります。飲食店の多くも15時〜18時頃に閉店してしまうので、旅館に1泊するだけで旅はまったく別物になりますよ。